浅田真央と水蜜桃

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「フィギュアは欧米のスポーツ。日本人が良いと思っても…」荒川静香

黄金ビールでカンパイ黄金ビール黒ビール

トリノオリンピック金メダリストの荒川静香さんと、スポーツジャーナリストの二宮清純さんの対談の前編です。

日本のフィギュアスケート界では、男女共に有力選手が群雄割拠し、フィギュア大国と言っても過言ではなくなりましたが、国際的にはまだまだ被差別国です。
バンクーバーオリンピックでも、開催国カナダで日本人のエキシビションがバッサリとカットされました。
伝統ある北米やヨーロッパからは、歓待されていないのが実情だと思います。

この対談でも、「フィギュアスケートは欧米のスポーツです。いくら日本人の私たちがすばらしいと思っても、欧米人が受け入れてくれないと評価されない。」と語っています。

ビールを飲みながらの対談なので、いつもよりフリーダムに話しているようです。

♪ 続き ♪

この人と飲みたい<前編>

二宮: はじめまして。荒川さんにはぜひ一度、お話を伺いたいと思っていました。金メダルを獲得されて3年。ようやく願いが叶いました。お酒も相当好きだと聞いていますよ。
荒川: どこからそんなウワサが出たんでしょうね(笑)。でも、お酒が入ると気持ちがいい状態がずっと続くタイプですね。以前と比べると飲む量は減りましたけど。

二宮: 現役の頃は練習後の一杯が何よりの楽しみだったとか?
荒川: 試合前だろうが、食事の時にお酒を楽しんでいました。飲まなかったのはオリンピックの時だけかもしれません。昔は今から考えると食べる量も多かったですね。いくら食べても夜中にお腹がすいてくる。“底なし”の胃袋でした(笑)。

二宮: それだけ練習もハードだったんでしょうね。
荒川: そうですね。すごく代謝も良かったんじゃないでしょうか。最近は食べる量も普通になりました。

二宮: 好きなお酒はビール?
荒川: 何でも飲みます。わりと最初に頼んだものを最後までずっと飲み続けることが多いですね。

二宮: では、今日は、この「ザ・プレミアム・モルツ」で最後まで滑り終えましょう(笑)。
荒川: よろしくお願いします(笑)。

二宮: これまで五輪やサッカーのW杯など、大きな国際大会は必ず現地で取材をしているのですが、3年前のトリノ五輪だけは行けなかった。正直、荒川さんの演技を生で見られなかったことを今でも後悔しているんです。
荒川: オリンピックの時のメンタルは、私の中では特殊なものがありました。フィギュアスケートは点数を競う種目ですが、「試合ではない」「戦いではない」という気持ちだったんですよ。
 きっかけになったのはタチアナ(・タラソワ)コーチの一言。前年の夏に「オリンピックはウィンターゲームスって言うじゃない? コンペティションじゃなくてゲームっていう気持ちで臨んだら?」ってアドバイスされたんです。その言葉はとても新鮮でした。
 それまでの私はコンペティションで勝とうという気持ちが強すぎた。なかなか高得点が出ないことに悩んで、競技に向いていないんじゃないかと考えたこともありました。トリノの場合はオリンピックというゲームに気持ちよく臨もうと思ったのが良かったのかもしれません。

二宮: 相手を倒そうという発想ではなく、自分が最高の表現をすることに徹しようという気持ちだったわけですね。
荒川: ええ。もうひとつはオリンピック自体を楽しもうと感じていました。オリンピックの特殊な緊張感に飲まれている選手を観察したり、外から客観的に大会をとらえたほうが自分の記憶にも残るし、面白いんじゃないかと。
 オリンピックのレベルまでくれば、どの選手もテクニックに大きな差はない。ほとんどがメンタルの勝負です。だから、フリーの時にも最終グループのスケーターたちがどんなメンタルで臨んでいるのかを見るのがひとつの楽しみになっていました。それがいい意味で自分を緊張から救ってくれたのかもしれません。

二宮: その辺りのメンタルコントロールは長野五輪で一度、大舞台を経験したことも影響しているのでしょうか?
荒川: ありますね。やはり長野のオリンピックは、ただ夢の中にいるような感覚で、自分がどう戦えばいいのか、どういう気持ちで氷に乗ればいいのか全く準備できませんでした。今ある状況についていくのが精一杯だったんです。
 そして16歳で大きな舞台を経験したことで、オリンピックに対して少し満足してしまった。もうちょっと自分らしくスケートを楽しみたい、普通の学生生活を送りたいという気持ちが強くなってしまったんです。正直、次のソルトレークの予選では真剣にオリンピックに出たいとは思っていない自分がいました。もちろん4年後のトリノなんて、全く考えていませんでしたね。20歳で引退して、残り2年間を大学で過ごして、社会に出ようと思っていましたから。

二宮: ところが長野から8年後、トリノの出場権を得て頂点に上りつめた。どの競技でも2大会連続出場して、前回の反省を生かして金メダルというケースはよくあります。でも、1大会ブランクがあって金メダルというのはあまり例がない。
荒川: トリノの時は、「オリンピックって誰もが経験できることではない。大事に演技しないともったいないな」と感じる自分がいました。だから、長野とは違って、どんな気持ちでオリンピックに入っていくべきか、事前に準備しようと意識していました。
 そこで自分をコントロールするためには、まず私自身の弱点を知り尽くしていなければいけない。それまでの私は緊張に弱くて、大事なところでいつもチャンスを逃してきました。それなら、どういう時に緊張して、緊張したらどうなるかを知らなくてはいけない。緊張するのは当たり前ですから、この状態でどう自分を保つかを考えていましたね。

二宮: その結論として、「コンペティション」ではなく「ゲーム」という感覚が生まれてきたと?
荒川: そうですね。自分が逆境に立っている時こそ、それを面白がらないといけない。以前は逆境に入ると抜けられないことが多かったので、自分の思考パターンを変えればいいのでは、と考えました。緊張している自分を楽しんでみてあげるくらいの余裕を持とうと。

二宮: リンクの外にもう一人の荒川静香がいて、客観視して自分をコントロールしている感覚でしょうか。
荒川: メンタルの部分だけはリンクの外に切り離しているような感じですね。でも、緊張の渦中にいるメンタルも感じていたい。緊張しているのを悪いことだととらえないようにはしていました。緊張から完全に解放されるのは難しくても、緊張から自分を少し救ってあげる。このレベルに自分を導けないかなと思っていましたね。

二宮: ただ、精神面でのアドバイスを与えてくれたタチアナコーチとの契約を五輪直前に解消し、ニコライ・モロゾフコーチに指導を仰ぎました。本番直前の変更はかなりの決断だったのでは?
荒川:  本当なら、代えたくなかったですよ。タチアナコーチからは表現面を含め、本当に大事なことを学びました。たとえば、ひとつひとつ丁寧に演技することの大切さ。「ダイアモンドを拾うように滑りなさい」と言われました。
 でも、その時点で自分に足りないものを考えたときにニコライコーチの指導を受けたほうがいいと判断しました。決断までは悩みましたが、このまま立ち止まることより前に進もうと決めたんです。

二宮: 自分に足りないものとは具体的に?
荒川: 足元での細かいステップです。ここで点数を重ねていかなくてはいけないのに、審判の評価は低かった。ニコライコーチはアイスダンスの元スケーターで年齢も30代と若いので、実際にリンクの上で指導してくれる。タチアナコーチが教えてくれたエモーショナルな部分と、ニコライコーチの組む細かいステップのシークエンスをうまく融合できればと考えていました。

二宮: 周囲にはコーチの変更を反対した人もいたそうですね。
荒川: でもシーズン中ですから、悩んでいても時間は過ぎてしまう。後ろを振り向いている時間はなかったんです。それまでの自分は他人のアドバイスは素直に聞き入れるタイプでした。とはいえ、どこかスッキリしない部分があったんです。もうトリノは最後の五輪になると決めていましたから決断しないで終わるより、決断して終わりたかった。やらないで後悔するのが、一番の後悔ですからね。

二宮: もうひとつの大きな決断はフリーの曲目を『幻想即興曲』から『トゥーランドット』に変えたことです。
荒川: 1月に日本代表合宿をトリノの会場でやった第一印象は、「音楽がしっくりこないな」。それをコーチに伝えたら、「じゃあ、どんな曲なら会場に合うと思うの?」って聞かれて、真っ先に出てきたのが『トゥーランドット』でした。自分がこれまで何回か使ってきて、滑っていて一番心地がいい。やはり自分が好きな曲で、それをたくさんの人に伝えたいって気持ちで氷に立ったほうが素晴らしいんじゃないかと思ったんです。

二宮: 『トゥーランドット』はイタリア人にも馴染みのある作品です。その点も考慮したと?
荒川: その時にはそこまで考えたわけではなかったんです。結果としては、イタリア人の(ジャコモ・)プッチーニが作曲したり、開会式で(ルチアーノ・)パヴァロッティが歌ったり、イタリア人がよく知っている曲だった。何か不思議な縁ですよね。

二宮: しかも、その中の「ネッスンドルマ(誰も寝てはならぬ)」の一節にはこんなくだりがあります。「夜よ、失せろ! 星たちよ、沈め! 夜が明ければ、私は勝つのだ」。トリノと日本の時差は8時間。日本ではまさに夜明けの金メダルでした。
荒川: これも後でオペラを見に行って知ったんですよ(笑)。もともとは旋律や曲の流れが好きだったんです。04年に世界選手権で優勝した時も同じ曲でしたし、過去に3シーズン使っていて自分の心で滑れる。戦う上では自分を奮い立たせてくれる曲をあえて選ぶこともありますが、オリンピックはそうじゃないと感じたんです。

二宮: 「コンペティションではない」という気持ちが曲目にも表れたと?荒川: フィギュアスケーターの中には、技を競うことを目的として、観客の心に届かないような演技をする人もいます。でも、私はそれではいけないと思っています。高い技を出しながら、観ている人の心にもメッセージをぶつけていきたかったんです。特にフリーは最後の演技だし、伝えられるモノをすべて伝えきる4分間にしたかった。
 
二宮: 基本的にフィギュアスケートは欧米のスポーツです。いくら日本人の私たちがすばらしいと思っても、欧米人が受け入れてくれないと評価されない。トリノでは現地のイタリアの人たちがスタンディングオベーションをして、荒川さんの演技に感動している様子がテレビ画面からも伝わってきました。
荒川: うれしかったですね。結果は金メダルでしたけど、最大の目的は自分の演技をたくさんの方の記憶に残すことでしたから。何よりうれしかったのは、イナバウアーという、つなぎの技をたくさんの方に知っていただけたこと。これが私にとって最高の結果だったなと感じています。

二宮: 当時は誰もがイナバウアーのマネをしていましたよ。本当は足のつま先を180度開いて真横に滑る技なんですけど、ただ後ろに反って背伸びをしているだけの人もいました(笑)。
荒川: 帰国後、小さい子に「ママ、イナバウアーがいるよ」って言われたこともあります(笑)。ある意味、私の名前より有名になりましたね。

二宮: 実はイナバウアーは得点に直結しない技です。その点のリスクは考えませんでしたか?
荒川: 確かに点数にならないものを入れて、その後の演技で失敗したら何の意味もありませんよね。曲目を『トゥーランドット』に変更してからの1カ月間は、数字との戦いでした。点数の構成を抜け目なく組んだ上で、入れられるものなら入れたい。コーチと一緒に「前の選手がこう滑った場合は、こう行こう」と綿密なプランを紙に書いていきました。その結果、最後の3連続ジャンプの前に5秒だけ時間ができた。

二宮: そこで荒川さんがゴーサインを出したと?
荒川: 最終的に背中を押してくれたのはニコライコーチでした。3連続ジャンプを成功するか失敗するかは大きく点数に響きます。後半最大のヤマに向けて、できれば息を整えたい。「危険な賭けをしたくないな」。そんな思いが一瞬、頭をよぎりました。
 でも、コーチが「イナバウアーを入れよう。そのために5秒つくったんじゃないか」と半ば強引に勧めてくれたんです。「この曲で一番きれいにイナバウアーがはまる部分なのにもったいない」と。ニコライコーチは普段、抜け目なく得点を稼ぐことに主眼を置くタイプなので、この一言は意外でした。よくよく考えてみると、私が目指していたのは点数を稼ぐことではない。自分の良さを最大限に見せることです。コーチの言葉でハッと我に返ることができました。

二宮: メンタル面での発想の転換、コーチの入れ替え、曲目の変更、イナバウアーの採用 ――。ひとつひとつが、パズルのように組み合わさって素晴らしい演技につながっていったんですね。
荒川: いろいろあったシーズンだったので、オリンピックの舞台に立った時は自分にとって一番ラクな精神状態でした。トリノまでは、やはり結果を残すために観客の心に届いているかどうかに関係なく、点数を獲るためのスケートをしてきたように思います。
 でも、私の本当の思いはそうではなかった。結果よりも、心のこもった演技をみせたい。相反する2つの気持ちを抱えながら進んでいくのはツラかったんです。最後の最後でようやく自分の思いに正直になって、私自身を解放できました。それが表情だったり、全ての演技にいい方向につながったのかなと思っています。

二宮: 荒川さんの演技には点数を超越した美しさがありました。「ゲーム」に臨んだ荒川さんがあえて戦ったものをあげるとすれば、「点数をつけることの無意味さ」だったのかもしれませんね。
荒川: 「一番大事なのは気持ち」。これがオリンピックで得たものです。自分の思いを伝えようとする“気持ち”、やりたいことをやり抜こうとする“気持ち”。これはフィギュアスケートに限らず他の分野でも同じかもしれません。どんな思いを持って、自分はどうなりたいのか。そのビジョンが大切なんだと思っています。  
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テーマ:フィギュアスケート - ジャンル:スポーツ